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死という概念は、確かな存在として有りながら不可視である現象である。
死は、見えない。
人間が認識するする死とは、一種のモノの結末でしかない。
死そのものを見る、という事は死体を見るという事ではなく、
生命を停止させる原因や、寿命をカタチとして見るということが死を視るということだ。
概念でしかないもの、カタチのないものを捉えられる眼は、魔眼と呼ばれる。
死を見る目は「直死の魔眼」と称され、魔眼の中でも最高クラスであるが、
その保有者は皆無だと言われている。
主人公・遠野志貴は、大きな悩みがあった。
八年前、大きな事故に巻き込まれて瀕死の重傷を負い、
その状態から蘇生した後遺症なのか、志貴の眼は今までの眼とは違っていた。
壁や地面、人間にラクガキのような『線』が見えてしまうのである。
何日かして、それがモノの死に切れやすい『線』だと知った時、志貴は自分の眼を嫌悪した。
偶然知り合った『先生』から特別なメガネを貰って、
それをつけている間は『線』が見えなくなった後でも、
志貴にとって自分の眼というものは、異常なモノとして頭を悩ませるものだった。
十月も半ばにさしかかった秋。
遠野志貴は何年かぶりに自分の家に戻る事になる。
志貴は今まで親戚の家で生活をしていた。
その理由としては事故の後遺症である突発的な貧血を起こすという体質が、
遠野家の跡取りとして不適合と判断されたために、
親戚の家に預けられたからである。
妹である遠野秋葉を一人残していく事だけを後悔しながら…
しかし、八年後の今。
父親は他界し、妹であった秋葉が遠野家の当主となった。
志貴は勘当を取り消されて実家に戻る事になる。
今になって遠野の屋敷に戻る事を志貴は歓迎していない。
もともと自由気ままな生活が性にあっている志貴には、
遠野の屋敷の重苦しい生活は好ましいものではなかった。
だが、屋敷には秋葉がいる。
八年前、秋葉を屋敷に一人残してしまった事への後悔。
今では秋葉が一人で暮らしているという事も重なり、
志貴は“家に戻って来い”という言葉を無視する事はできなかった。
今までと同じ高校に通う道。
今までと違う家への帰り道。
坂の上にある、巨大な洋館。そこで志貴は秋葉と再会する。
今までの一般的な生活とはかけ離れた日常の中、
志貴は遠野志貴として暮らしていく事になる。
それが、物語の始まりだと知らないまま。
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